VETERANS COLUMN
ベテランズコラム

サイテックジャパン
篠原 雅人
2021/11/15
建設DX
【第1回】建設DX
  • 建設DX
  • i-Construction
  • 建設ICT導入
  • MC / MG

DXの取組は、ICT技術を活用した新しいビジネスモデルの創出や、デジタル化されていない業務プロセスの効率を上げるためにデジタル化することが代表的な取組です。
今、各業界(商社、流通・小売、金融、製造、サービス・インフラ、ソフトウエア・通信、広告・出版・マスコミ、官公庁・公社・団体)では、DXが盛んに取り組まれています。このため、今は、DX時代と言って良いと考えます。

建設業界もこの例にもれず、どこの地方都市にある建設施工会社で、建設DXに積極的に取り組まれています。この建設現場で取り組まれる建設DXの目的は、建設施工会社によってさまざまですが、建設現場の利益率向上、建設現場の働き手不足への対応など、と認識しています。また、この際には、建設現場でi-Constructionを実施して、建設DXの達成することを目指している場合が多いと認識しています。

本コラムでは、建設現場で取り組まれている建設DXを、出来るだけ時間をムダにせずに達成できるよう、i-Construction関連商品・ソリューションの販売・サポート全般を行っている立場だからこそ気づいたことを説明したいと考えます。具体的には、i-Constructionによる建設DXの達成に向けて必要不可欠だと考える、現場監督が新たに行うべき作業指示のために、監督さんが今まで行っていたことに加え、新たに考えるべきことを説明していきます。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

DXとは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、共創上の優位性を確立すること、とされています。※1
主な国土交通行政のDXとしては、2020年より、省横断的に取組を推進するインフラ分野の「DX推進本部」を設置し、インフラ分野のDXを進めています。

また、建設分野のDX(建設DX)では、デジタル技術として、ICT(情報通信技術)が用いられ、建設現場でi-Constructionが実施する場合が多いようです。

例えば、建設現場において、工事着手前に設計図書である線形計算書、平面図、縦断図、横断図を使い、3次元設計データを作成した上で、MC/MGを搭載した建設機械により機械施工を行うとともに、3次元設計データを搭載したGNSSローバーで管理することなどが想定できる。

※1 「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」(経済産業省:2018年12月)
https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004.html


ICTとは

ICT(Information and Communication Technology)とは、情報通信技術のことです。※2
国土交通省の政策として、2008年2月に、建設生産プロセスのうち「施工」に注目し、ICTの活用により各プロセスから得られる電子情報を活用して高効率・高精度な施工を実現し、さらに施工で得られる電子情報を他のプロセスに活用することによって、建設生産プロセス全体における生産性の向上や品質の確保を図ることを発表しています。

※2 国土交通省 ICT建設機械 精度確認要領(案)
https://www.mlit.go.jp/common/001284056.pdf


MC/MGとは

ICTの発展・普及に伴い、従来の施工方法に加えて、建設機械に搭載したMC/MG技術により提供される情報を用いた施工方法が、複数のメーカで実装され、実用化されてきました。
MC/MG(マシンコントロール/マシンガイダンス)とは、バケットやブレードなどの作業装置先端の3次元座標を、建設機械本体に搭載する3次元設計データと比較した結果で、作業装置の高さや傾きを自動制御する技術(MC)、あるいはモニタにより手引きする技術(MG)のことを指します。※3

※3 国土交通省 3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/constplan/content/001396085.pdf


i-Constructionとは

i-Constructionとは、「ICTの全面的な活用(ICT土工)」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、もって魅力ある建設現場を目指す取組みのこと、とされています。※4

i-Constructionは、次に示す点を建設現場が抱える課題と想定し、建設現場の生産性革命を目指す、国土交通省が推進する取組です。

・労働力過剰を背景とした生産性の低迷

・労働力過剰時代から労働力不足時代への変化

・安全と成長を支える建設産業

・安定的な経営環境

・生産性向上の絶好のチャンス

※4 国土交通省 i-Construction
https://www.mlit.go.jp/tec/i-construction/index.html

建設DX

i-Constructionによる建設DXの達成のカギは、現場監督がにぎっている

i-ConstructionのひとつであるMC/MG導入により、建設DXを達成に導くため、監督さんが今まで考えてきたことに加えて、考えるべきことは、次の2つです。

・建設現場の改善したい課題が、建設現場に導入するMC/MGで解決できるか(見込み)

・次のポイントを考慮した施工計画と施工指示

① MC/MGを導入し、i-Constructionを行う作業条件

② 建設現場に導入するMC/MG(i-Construction)の支援内容

③ MC/MGを搭載した建設機械を建設現場で操作するオペレータの技量


建設現場へのMC/MG導入時に、現場監督が最初に考えるべきこと

国土交通省が推進するi-Constructionにおいて、ICTの全面的な活用の施策を建設現場に導入するために必要なICTに、MC/MGがあります。※3

このMC/MGである「Trimble Earthworks」は、3次元設計データを搭載した油圧ショベルやブルドーザなどの建設機械によって、建設現場で施工を行うため、建設DXの取組と評価されます。
しかし、本当の意味で、建設現場において建設DXを達成するためには、まず、建設現場に導入したMC/MGで、建設現場が抱えるどの課題を解決するのか、改めて設定・確認することが大事です。

※3 国土交通省 3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/constplan/content/001396085.pdf


建設現場へのMC/MG(i-Construction)導入時に、現場監督が考慮すべきこと

ここでは、次の例を使い、それぞれでMC/MG導入時に行う監督さんからの作業指示や施工計画が異なることを説明していきます。
(例1)経験の浅いオペさんのみの建設工事で「建設機械の操作を効率的に行なって施工効率を改善したい」という課題を抱える建設現場に導入されるMC/MG
(例2)経験豊富なオペさんが主体の建設工事で「施工指示を合理的に行いに施工効率を改善したい」という建設現場に導入されるMC/MG

建設DX

(例1)経験の浅いオペレータによる操作時の思考と、現場監督からの作業指示

経験の浅いオペさんは、建設機械の操作自体に必死になり、余裕は全くありません。このため、施工効率を改善することはもちろん、効率的に作業が終わるように、ムダな操作をしないようなことは考えられないと、認識しています。

この場合に、MC/MGを導入すると経験の浅いオペさんには、建設機械の操作時に、MC/MGによる自動制御/ガイダンスで、多少は余裕が生まれます。ただし、経験の浅いオペさんには、現場経験が乏しく、色々な判断ができないため、この余裕を適切に生かしきれません。

だから、監督さんは、出来るだけ早い段階に、MC/MGによって生まれる余力を使い経験の浅いオペさんが行なって欲しい(行うべき)作業内容を事前に想定し、具体的な作業指示を練っておく必要があると考えます。

一般に、経験の浅いオペさんは、油圧ショベル操作中は、実施する作業に適した油圧ショベルの向き、油圧ショベルの足場整備、掘削土運搬用のトラック等の組み合わせ機械の配置にまで気が回らず、適切な機械配置がされないことによる無駄な操作が発生します。この他、油圧ショベル周辺の安全確認が、おろそかになります。

このため、施工効率の改善には、経験の浅いオペさんに対しMC/MG導入によって生まれる余裕・余力を、まずは、監督さんが想定し、より適切で具体的な作業指示が必要になると考えます。

なお、私の建設現場での経験則から言えることですが、MC/MGを搭載した油圧ショベルによって、経験の浅いオペさんであっても、ムダの少ない操作は十分可能になります。


(例2)経験豊富なオペレータによる操作時の思考と、現場監督からの作業指示

経験豊富なオペさんは、普段から次の作業を想定して今の作業を行うことを常に考えるなど、建設機械の操作時に余裕がかなりあります。特にオペさんは、MC/MGがその機械施工に与える影響が判断できると考えます。このため、建設現場の条件を踏まえた更なる合理的な作業手順について監督さんとオペさんで詰めておく必要があると考えます。

経験豊富なオペさんは、油圧ショベル操作中に、この先の作業段取りを考えたり、建設現場条件を踏まえ、更なる施工効率改善に必要な建機・ヒト・運搬車両の配置を考えたりすると、認識しています。当然、MC/MGを搭載した油圧ショベルによる施工時は、経験豊富なオペさんには、かなり余裕が生まれ、「この建設現場なら、このようにすれば良いなぁ」などと、豊富な建設現場経験に基づき、更なる施工効率改善のアイデアが浮かぶことも、想定できます。

このため、特にMC/MGを導入した際は、監督さんとオペさんがよりコミュニケーションをとり、場合によっては、臨機応変に段取り替えをすると言った建設現場環境を整えることも、施工効率改善には必要となると考えます。

もちろん、建設現場(監督さんやオペさん)にMC/MGを使うノウハウが蓄積されていれば、あらかじめ建設現場環境を整えた施工計画が立案可能となります。

なお、再びですが、私の建設現場での経験則から言えることですが、MC/MGを搭載した油圧ショベルの使用だけでも、経験豊富なオペさんは、よりムダのない施工が可能で、作業効率の改善は見込めます。

また、これによって、デジタル技術であるMC/MGの導入効果が異なりますし、建設現場が抱える課題が解決するか否かが決まると考えます。

建設DX

ICT土工を行う建設現場で学んだ価値ある経験則

この考えは、いくら便利な道具を導入しても、道具の使い方を考えておかないと、便利な道具は生かせないという、以前私が建設現場で学んだ経験則です。
20年近く前の話になりますが、情報化施工技術と呼ばれていたMC/MGの建設現場への導入時に、出会った2人の人物と私との会話です。
マシンガイダンス技術を工事現場で数分説明しただけで、「マシンガイダンス技術で所々に土工定規をつくれば、簡単に法面整形は行えて便利だね」と私に即答された熟練オペさん。
この話を聞いていた「この現場の施工手順は、もう決めて工事を進めて順調に来ているので、今更、段取り変えはしない。でも、この新技術は上手く使えば現場では便利だね」と私に即答された監督さん。


[まとめ]いつも行っている現場監督に加えて欲しいi-Construction導入の視点

まとめますと、建設DXをMC/MGで達成するためには、監督さんが、建設現場特有の課題を明確にし、人材も含めた建設現場条件を踏まえたMC/MGによる施工計画の立案と、建設現場で作業するオペレータの技能を考慮し、現場監督さんとオペさんの意思疎通を図った上で、監督さんから明確で的確な作業指示をオペさんに行う必要があると考えます。

振り返ると、ここで説明した内容は、監督さんが普段行っている現場監督業務の延長線上の内容で、目新しい、特別な内容ではありません。 しかし、建設現場でMC/MGを前向きに利用し、実施したi-Constructionにより、建設DXで建設現場が抱える課題を解決するためには、重要な内容であると考えています。

建設現場の課題を解消することを基に、実施したi-Constructionによる建設DXを達成するために、あなたがMC/MGを上手く使うノウハウを、身につけてみませんか。

あなたの働く建設現場でi-Constructionソリューションを上手く使って、あなたの味方にしてみませんか。現場監督であるあなたに蓄積されたi-Constructionのノウハウは、あなたが建設現場で発揮すれば、所属する建設施工会社のデジタルビジネス価値を、きっと一歩前に進めることができます。

サイテックジャパンが、あなたの建設現場に適したi-Construction関連商品・ソリューションを導入支援しますので、まず気になったら、一度ご連絡してみて下さい。

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