VETERANS COLUMN
ベテランズコラム

サイテックジャパン
杉山 修武
2021/11/15
浚渫工事
【第1回】浚渫の歴史
  • 浚渫工事
  • 浚渫船
  • ICT浚渫
  • 見える化

1.浚渫工事とは?

浚渫の歴史はいろいろなところで発表されていますが、江戸時代1831年の大阪安治川の川浚え、「天保の大浚え」とも言われ、港湾工事(浚渫工事)の先駆けと言われています。

当時の安治川河口は、海の玄関として大阪の物流を担い商業の繁栄に貢献していましたが、堆積した土砂で船の航行に支障をきたしてきたので、航路浚渫を行ったようです。浚渫土砂は天保山に運搬し埋め立てたようです。延べ10万人動員され、2年がかりの工事だったようです。
日本最古の浚渫船は1868年に作られたという文献があります。その後、色々つくられ現在に至っています。

言葉の意味としては、なぜ浚渫というか

「浚」:さらう、水底の土砂を掘って深くする

「渫」:さらう、水底の泥、ごみなどを除く

と言った意味があります。二つとも「さらう」という意味がありますが、「水底の土砂を掘って深くする」「泥、ごみなどを除く」といった意味を考えると、今ある浚渫工法が様々な物がある事もうなずけます。

2.浚渫船の種類

浚渫船については先に少し触れましたが、1868年に日本で最古の浚渫船が作られたとあります。現在では、バックホウ浚渫船、ポンプ浚渫船、グラブ浚渫船、汚泥浚渫船、と言ったものが代表的ですが、それぞれに特徴があり種類もたくさんあります。

バックホウ浚渫船
台船の上にバックホウが搭載されている浚渫船

河川、湖沼、港湾、漁港などで数多くみられる浚渫船です。誰もが一度は見たことがある作業船です。 作業性や効率が良く、施工単価も比較的安価に済みます。水底の設計面に対しての精度は非常に高く、機動性がある事から国内でも多くの現場で活躍しています。水深が比較的深くない場所での作業で使用されます。

浚渫工事


グラブバケット浚渫船
台船の上にクレーン機能が付いた重機が搭載された浚渫船

港湾工事で使用さることが多く、航路浚渫で主に使用されます。大型のグラブバケットを使用して、水深の深い作業で使用されます。 ワイヤーの先端に掘削するグラブバケットを付けての作業のため精度を保つのが非常に難しいと言えます。オペレータの経験と技術が必要になる作業とも言えます。

浚渫工事


ポンプ浚渫船(カッターポンプ)
ポンプ浚渫船はラダーと呼ばれる吸引した土砂を通す管を先端に取り付けた浚渫船

ポンプ浚渫船は動力(ディーゼルエンジン、電気動力)で吸引ポンプを動かし、水底の土砂などを水流とともに吸引し、浚渫船の後部より処理施設までパイプラインで圧送します。浚渫場所から処理施設までパイプラインで結ぶことで船団を最小限に出来るので効率は優れている。ポンプ浚渫船の種類は吸引ポンプの馬力により分かれています。マイクロポンプ、小型ポンプ船とポンプ浚渫船と分類もされています。

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汚泥吸引浚渫船
シルト質土(ヘドロ)を対象とした吸引方式の浚渫船

吸引動力は様々でバックホウをベースにした機械が多くなります。ポンプ船の先端をシルト質土対応に改良した物もあります。汚泥浚渫の種類としては、真空吸引圧送浚渫船(真空ポンプが動力、空気圧縮機が動力)、ジェットポンプ式などの種類があります。

浚渫工事

浚渫工事

他にも多くの分類された作業船があります。詳しくは以下を参照ください。
http://www.s-jwa.or.jp/workvessels/index.html


3.浚渫工事の役割

港湾工事における浚渫船

港湾工事における浚渫工事の役割は航路浚渫という大きな役割があります。
大型の貨物船、タンカー、旅客船の航行が安全に出来るよう水深を確保する工事を行います。港湾に出入りする船の数が多くなると安全に航行出来る航路が必要になります。また、大型船が停泊できる施設が出来ると水深確保の工事が必要になります。

また、昨今の地震災害などでの耐震化を進めるうえで消波ブロック(組ブロック)の床掘りや防波堤の水底の掘削工事などでも浚渫作業が行われる場合もあります。
日本は海に囲まれた島国です。物流の多くは船で行います。港湾内の安全を確保する上で港湾工事の浚渫作業は非常に重要な役割を果たしています。

河川工事における浚渫

河川工事と言うどういった工事を思い浮かべますでしょうか、ひと昔前ですとスーパー堤防と言った言葉が思い出されますが、現在はスーパー堤防の工事と言ったものは少なくなっているように思われます。最近では、各地で起きている豪雨災害での築堤決壊が見受けられます。
豪雨による災害の復旧作業で築堤工事が行われることは多々ありま すが、豪雨災害における復旧作業で築堤をスーパー堤防化するより、河床高を下げる工事に注力しているように思われます。

元々河川の堤防を作っている工事でも計画河床高という、河川の河床高が決まっている基準があり堤防の高さが決まっています。ですが、全国各地の河川の計画河床高は保たれていないという現実があります。
豪雨だけではなく、豪雨災害を受けていない地域でも長年の蓄積で河床が高くなっています。そのため河川の河床高を計画河床高に戻そうと工事が発注されています。

また、災害があったからと言事ではなく河口付近に堆積しやすい河川の河口部の維持的な工事が発注されています。
これらを行うのはほとんどがバックホウ浚渫船で行われることが多く、最近ではICT浚渫での施工が主流になってきています。

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