VETERANS COLUMN
ベテランズコラム

サイテックジャパン
杉山 修武
2022/11/11
浚渫工事
【第3回】浚渫工事におけるICTの活用
  • 浚渫工事
  • 浚渫船
  • ICT浚渫
  • 見える化

ここでは、ICT活用について説明します。
港湾工事、河川工事では多少の違いがありますので、そのあたりも説明いたします。

1.ICT浚渫工(港湾工事)

平成29年度より「ICTの全面的な活用」としてICT活用工事(浚渫工)の導入する事を決定。

ICTの全面的な活用を推進する工種(港湾事業)

対象工種は、ポンプ浚渫、グラブ浚渫、硬土盤浚渫、岩盤浚渫、バックホウ浚渫
対象工事は、港湾等しゅんせつ工事



2.ICT浚渫工の推進を図るための措置

ICT浚渫工を推進するための措置として、以下の項目のICT活用を進めて行くとしています。

ICTを活用した測量業務

① マルチビームやUAV等を用いて深浅測量や水路測量(キーになる測量)を実施し、設計や施工段階、維持管理の検討を円滑に進めるための基礎資料の作成を実施する。

② ICTを活用した測量業務を実施した際には、必要な費用、損料等、必要な経費を計上する。

③ ICTを活用した業務には、業務成績評価において評価するものとする。

ICTを活用した業務

① 建設生産・管理システム全体の課題解決及び業務の効率化を図るため、建設生産・管理システムにおける測量・調査、設計業務等のプロセスの各段階において、BIM/CIMを活用した検討を実施する。
設計業務におけるBIM/CIMの適用とは、「3次元モデル成果物作成要領(案)港湾編」に基づきBIM/CIMモデルを作成・更新及び納品、属性情報を付与することを指す。

② BIM/CIM活用業務を実施する場合は、別途定める積算要領により、BIM/CIMモデルの作成や更新等に必要な経費を計上する。

③ BIM/CIM活用業務を実施した際には、業務成績評価において評価するものとする。

ICTを活用した工事

① ICT活用工事とは、以下に示すICT活用における施工プロセスの各段階において、ICTを全面的に活用する工事である。
【施工プロセスの各段階】
Ⅰ. 3次元起工測量(ICT浚渫工、ICT基礎工、ICT海上地盤改良工)
Ⅱ. 3次元数量計算(ICT浚渫工、ICT基礎工、ICT海上地盤改良工)
Ⅲ. ICTを活用した施工(ICT浚渫工、ICT基礎工、ICTブロック据付工、ICT海上地盤改良工)
Ⅳ. 3次元出来形測量(ICT浚渫工、ICT海上地盤改良工)
Ⅴ. 完成形把握のための3次元測量(ICTブロック据付)
Ⅵ. 3次元データの納品(ICT浚渫工、ICT基礎工、ICTブロック据付工、ICT海上地盤改良工)

② BIM/CIM活用工事の実施。
BIM/CIM活用工事とは、建設生産・管理システム全体の課題解決及び効率化を図るため、建設生産・管理システムにおける施工プロセスの各段階においてBIM/CIMを活用した検討等を実施する。

③ ICT活用工事の必要経費計上。
発注者指定型:発注者の指定によりICT活用工事を実施する場合については、別途定める積算要領により必要な経費を計上する。
あわせて、ICT活用工事の活用効果等に関する調査や施工実態調査を実施する場合、調査に必要な経費を計上する。
施工者希望型:受注者からの提案・協議によりICT活用工事を実施する場合、設計変更の対象とし、別途定める積算要領により必要な経費を計上する。
あわせて、ICT活用工事の活用効果等に関する調査や施工実態調査を実施する場合、調査に必要な経費を計上する。
BIM/CIM活用工事:BIM/CIM活用工事を実施する場合は、CIMモデル作成・更新費用等、必要な経費を計上する。

④ 施工者希望型では、総合評価落札方式において、ICT活用の計画について評価するものとする。

⑤ 工事成績評定における評価は、ICTの活用、BIM/CIMの活用について評価するものとする。といったようにICTを全面的に活用するするためには、ICT活用工事の定義と費用、ICTを活用した際の評価をしっかり明示することにより、ICT活用を推進しています。



3.1 ICT活用の推進のための留意点

ICT活用の推進に当たって、受注者が円滑にICT活用工事を導入して活用できるように、以下の項目について発注者が積極的な対応を図るとしています。

① ICT活用工事において、施工に活用する技術については、その技術に応じた監督・検査を実施することがICT活用の円滑な推進のために必要である。
このため、ICT活用工事に関する監督・検査体制の構築及び要領等を周知し、各要領等に基づいた監督・検査を実施するものとする。

② ICT活用を実施するためには個々の技術に適合した3次元データが必要である。
3次元の設計ストックの準備が出来るまでの当面の間は、2次元の設計ストックを受注者が3次元に変換して活用する。この設計データの3次元かにかかる費用は発注者が負担するものとする。
なお、受注者は、作成した3次元設計データを用いて設計図書の照査を行い、その結果を踏まえて、3次元設計データで設計図書の変更を行うものとする。

以上のように、ICTの全面的な活用の推進を行っています。発注者がICTを理解し、受注者への費用負担の要領を決め積算し計上する。
このように発注者が積極的に費用、評価を行うことによりICTを活用を推進しています。

では、ICT浚渫工(港湾)はどのように進めているか手順を追っていきます。

浚渫工事



3‐1.ICT浚渫工手順

① ICT起工測量(マルチビームを用いた深浅測量マニュアル(浚渫工編))→② 設計・施工 計画(受注者)(3次元データを用いた港湾工事数量算出要領(浚渫工編)→③ 施工箇所可視化技術による施工・出来形管理(3次元データを用いた出来形管理要領(浚渫工編))→④ 工事検査(3次元データを用いた出来形管理の監督・検査要領(浚渫工編))の手順で施工を進め検査を受ける。

3次元データを使用することで施工の効率化を図り出来形管理を簡略化し書類を削減し、生産性の向上につなげている。

では、河川の浚渫工事はICTをどのように活用しているか確認してみましょう。



4.ICT活用工事(河川浚渫)

港湾浚渫同様ICTを活用した河川浚渫工事です。河川の浚渫工事は、バックホウ浚渫・ポンプ浚渫、グラブ浚渫とありますが、工種に関してはバックホウ浚渫のみICT浚渫工としています。
ICT河川浚渫工は以下の①~⑤のすべての段階でICT技術を活用することとなっています。
① 3次元起工測量
② 3次元設計データ作成
③ ICT建設機械による施工
④ 3次元出来形管理等の施工管理
⑤ 3次元データの納品



4-1.ICT河川浚渫の施工技術の具体的内容

① 3次元起工測量
起工測量において、3次元測量データを取得するため、下記1)~2)から選択(複数以上可)して測量を行うものとする。なお、直近の測量成果等での3次元納品データが活用できる場合等においては、管理断面及び変化点の計測による測量が選択できるものとし、ICT活用とする。
1) 音響測深機を用いた起工測量
2) その他の3次元測量技術を用いた起工測量(※)
(※)従来の管理断面においてTSを道いて測量し、計測店同士をTINで結合する方法で断面間を3次元的に補完することを含む。

② 3次元設計データ作成
4‐1①で計測した測量データと、発注者が貸与する発注図データを用いて、3次元出来形管理を行うための3次元設計データを作成する。

③ ICT建設機械による施工
4‐1②で作成した3次元データを用い、下記1)に示すICT建設機械を作業に応じて選択して施工を実施する。
1)3次元MCまたは3次元MG建設機械
※MC:「マシンコントロール」の略称、MG:「マシンガイダンス」の略称

④ 3次元出来形管理
4‐1③による工事の施工管理において、下記1)~3)に示す方法により出来形管理を実施する。
1) 音響測深器を用いた出来形管理
2) 施工履歴データを用いた出来形管理
3) その他の3次元計測技術を用いた出来形管理
⑤ 3次元データの納品  

⑤ 3次元データの納品
4‐1④による3次元施工管理データを、工事完成図書として電子納品する。



4-2.ICT活用工事の対象工事

ICT活用工事の対象工事(発注工種)は「河川しゅんせつ工事」を原則とし。下記(1)(2)に該当する工事とする。

(1)対象工種
ICT活用工事の対象は、工事工種体系ツリーにおける下記の工種とする。
1)浚渫工(バックホウ浚渫船)・浚渫船運転

(2)適用対象外
従来施工において、土木施工管理基準(出来形管理基準及び規格値)を適用しない工事は適用外とする。



5.ICT活用工事の実施方法

 ICT活用工事の発注は、下記の(1)~(3)によるものとするが、工事内容及び地域におけるICT施工機器の普及状況を勘案し決定する。

(1)発注者指定型
予定価格(消費税を含む)が3億円以上を目安として、発注者が設定した対象工事に適用する。

(2)施工者希望Ⅰ型
予定価格(消費税を含む)が3億円未満かつ、浚渫数量が20,000m3以上を目安として発注者が設定した対象工事に適用する。

(3)施工者希望Ⅱ型
予定価格(消費税を含む)が3億円未満かつ、浚渫数量が20,000m3未満を目安として発注者が設定した対象工事に適用する。

※「そのほか」として、ICT活用工事として発注していない工事において、受注者からの希望があった場合は、ICT活用工事として事後設定できるものとし、ICT活用工事設定した後は、施工者希望Ⅱ型とどうお用の取り扱いとする。

以上のようにICT浚渫工(港湾)とICT河川浚渫工では工種の違いや、具体的内容、実施方法などに違いがあります。
大きな違いとしては、港湾工事の出来形はICT技術を使用した出来形測量を実施とありますが、河川工事では、施工履歴データを用いた出来形管理が可能となっています。
ICT浚渫の港湾・河川の流れを下記に示します。

浚渫工事

赤枠で示した出来形管理が大きく違いがあります。港湾工事(浚渫)ではナローマルチビームを使用した出来形管理が行われ、測量・測量結果の待ち時間が出来る。
それに対して、河川工事(浚渫)は施工履歴データ(施工時の浚渫機掘削場所の出来形データ)を出来形として承認されています。
この部分が大きな違いになります。
では、当社では港湾工事、河川工事に対応したソリューションはあるのか?という事になりますが、バックホウ浚渫については、港湾、河川ともに従来から陸上で使用しているMGを利用していただいてました。
現在の河川工事での出来形管理はクラウド経由で管理していただいておりました。
ただ、浚渫や港湾工事の他工種には対応していないのが現状でしたが、水上作業(重機作業)のほとんどを管理できるTrimble Marine Construction Software をリリースしております。

では、Trimble Marine Construction Software とICT浚渫・ICTを活用した港湾工事の使用感を説明します。



【特徴】1.3次元現況データが表示可能(起工測量のデータ)csvデータ入力。

浚渫工事

浚渫工事

音響探査機(ナローマルチビーム含む)のデータをcsv形式で取込み、施工画面に表示することが可能となりました。
従来のMGでは表示できなかったデータです。
水中作業はオペレータが目視することは不可能です。水底の現状を可視化することにより施工効率、生産性の向上につながります。



【特徴】2.3次元の完成データ(構造物)を取り込み表示可能。

浚渫工事

赤枠内は完成形の3次元データを取込み表示することが可能となっています。
消波ブロックの施工画面ですが、施工箇所の色が分かり、設置後の管理も画面上で分かるようになっています。



【特徴】3.浚渫機(バックホウやクレーン、ポンプ船)や台船を3次元データとして作成し表示が可能。

浚渫工事

バックホウやスパッド付き台船を3Dデザインソフトで作成し取込み表示することが可能です。
施工オペレータはよりリアルに施工をすることが可能です。
3DデザインはSKP、3DS、3DXF(ワイヤーフレーム)



【特徴】4.施工履歴データを直接アウトプットできます。

浚渫工事

音響測深機(ナローマルチビームやシングルビーム)のデータをcsv形式で取込み、施工を進めることで、そのデータに施工履歴として上書きをしていきます。
そのデータをcsv形式でアウトプットし出来形とて管理します。

浚渫工事

① 履歴データから
② csvデータとしてアウトプット
③ 点群処理ソフトで出来形の点群を処理
④ 出来形帳票で判定

このように、クラウド管理以外でも履歴データが取れることが特徴の一つです。
BH浚渫の場合はバックホウの刃先データが履歴となり、クレーン船のような作業船は、ブロックの敷設場所のX.Y.Zが履歴として記録できます。

Trimble Marine Construction Softwareはこのように3次元データをむだなく使用し出来形の管理まで3次元データで管理します。現在市販で手に入るソフトウエアでこのような機能を有しているものは他にありません。

ページトップ