Case Study導入事例

Trimble SiteVisionを活用した補強土壁の施工

株式会社豊蔵組 様
土木部

https://www.toyokura.co.jp

河川、ダムから橋梁、道路、上下水道、公共施設などの土木工事一式を請け負い、幅広い分野で活躍されています。近年はi-Constructionに積極的に取り組まれ、生産性の向上を実現していくことで、建設現場の週休二日制の推進など、働きやすい職場づくりを目指しておられます。

千代田機電株式会社 様
ICT推進チーム

http://www.chiyoda-kiden.co.jp/

石川県、富山県を中心に、建設機械のレンタルから販売、整備、工事まで、様々な事業を展開。i-Constructionにもいち早く取り組み、測量・設計・施工・検査・納品に至るすべてのプロセスに柔軟に対応。

本事例では、千代田機電様が導入された『Trimble SiteVision(トリンブル サイトビジョン)』を使った、豊蔵組様の施工現場での活用方法についてご紹介します。

Trimble SiteVision採用の背景

豊蔵組と千代田機電では近年注目を浴びている、現実空間に視覚情報(3次元データ)を重ねて表示することができるAR(拡張現実※1)技術に着目しました。屋外の現場に特化した屋外型AR『Trimble SiteVision(トリンブル サイトビジョン)』は、RTK-GNSS測位方式(※2)により位置情報を取得し、スマートフォンのカメラでとらえた現実空間と3次元データ(LandXML)をスマートフォンの画面に重ねて表示することができます。さらに移動の多い現場での持ち運びも容易で、スマートフォンで手軽にAR技術を利用できることからも、補強土壁の現場において利便性が高いと考え、『Trimble SiteVision』の採用を決めました。

※1 AR…拡張現実(Augmented Realityの略)。実際の空間にバーチャルの視覚情報を重ねて表示するもの。
※2 RTK-GNSS測位方式…電子基準点や現場周辺に仮設置した基準局からの補正情報を利用し、高い精度で測位可能な技術。

補強土壁の特徴と課題

補強土壁は、背面の盛土に引張力の強い補強材(ジオグリッド等)を面状に配置し、盛土材を効率よく拘束することにより、盛土を補強する重要な構造物です。しかし、盛土材の土質定数や壁高等の条件によりグリッドの強度、長さ、配置間隔を複数のパターンで変化させ、安全で経済的な構造物の設計を行う必要があることから、使用する部材の種類や作業工程が多岐にわたるため、機械化やICT技術の導入は進んでいないのが現状でした。

従来、補強土壁は2次元の図面(正面展開図、標準断面図)で施工を行っており、図面と現地の照らし合わせに大変な労力がかかっていました。また補強土壁の施工は、複数の工程を繰り返し行うことから、ある程度の作業従事者(マンパワー)が必要で、さらに理解度・熟練度により施工速度が大きく左右される工法です。作業内容を作業従事者に理解してもらうために、多くの施工図を作成し現場でも細かな説明を行うので、大変な労力と時間を要します。作業従事者一人一人が作業内容を簡単に理解でき、スムーズに施工ができる新たなやり方が必要だと考えていました。このような状況の中でSiteVisionには大きな期待が寄せられていました。

Trimble SiteVisionの効果

まずSiteVisionを使って干渉のチェックなどの照査を行いました。起工測量で得られた現況点群データと補強土壁の3次元データを重ね合わせれば、簡単に視覚化されるので、従来の方法より照査の所要時間が大幅に短縮されました。【画像1】

また従来の設計図は、2次元の正面展開図と標準断面図により表現され、ジオグリッドの強度ごとに色分けが行われていました。3次元データでもこの色分け設定を行い、各層ごとに配置されるジオグリッドの強度をデータで表現し、強度の差を容易に判別できるようにしました。【図1、図2】

【画像1】補強土壁 背面
干渉のチェックなどの照査も容易になった。
標準断面図
【図1】標準断面図(2D)
【図2】3次元ジオグリッド(3D)
標準断面図と同様に、
強度の違いを色で表現することができる。

作業従事者に対する事前の施工勉強会にもSiteVisionを利用しました。以前はいくつもの施工図を準備し、現地で照らし合わせを行いながら施工箇所の確認等を行っていました。SiteVisionなら、事前に取り込んだデータを大型モニターに表示(ソフトウェアや接続用ケーブルが別途必要)し説明ができるので、準備時間の削減や作業内容の理解度の向上にも貢献しました。

施工勉強会の様子
モニターに映して共有

実際の施工での活用

次に、準備段階だけでなく実際の施工時にはどのように活用できるのか、検証を行いました。SiteVisionに表示される設計データの位置精度については、スマートフォンのカメラによるゆがみの発生や、方向認識機能が手元の微妙なブレに敏感に反応してしまう、などの現象がみられました。そのため、2D表示(平面表示)機能を使用することにより、カメラ精度や方向認識機能に関係なく、GNSSを用いた測量機と同様の測位結果を得られることから、AR機能と2D機能を併用することにより、施工支援に活用できました。

SiteVisionに設計データを表示
緑部分は設計データのジオグリッド(画面拡大)
2D表示機能(平面表示)

まとめ

今回、SiteVisionを利用した補強土壁の施工を検証した結果、現況点群データに3次元データを重ねることで補強土壁の位置確認が明確となり、干渉チェックや照査がスムーズに行えたことは大きな成果となりました。SiteVisionによって作業内容の指示もスムーズに行え、管理者が現場に張り付きで指示する必要が無く、作業従事者が各自作業内容を理解して能動的に動けたことから、作業効率が大幅に向上したと実感しています。施工時の活用には手ブレ等の課題が残るものの、2D表示機能等を併用すれば、現状でも十分活用できる機能を備えていると感じました。SiteVisionの今後の更なる技術革新に期待をしています。

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